2019年4月14日
川崎大師は7年振りかもしれない。
毎年のように来ていたこともあったのに。
映画『空海-KU-KAI- 美しき王妃の謎』の公開記念として開催される夢枕獏さんの講演会にやってきた。
仏教に興味を持ち始めていたこともあり、獏さんの原作「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」を一気に読み上げた。
ものすごい言葉の羅列だった。
たまらん。。。
なんともいえない感覚だった。
空海に魅了され、獏さんに導かれ、今日は自分の楽しみのためにやってきた。
が、帰り際に、大本堂の灯りと読経に胸が締めつけられた。
7年前、母の余命を宣告され、わたしたち姉妹はそれまでにないぐらい働いた。母の介護をし、家事をし、それぞれの仕事をした。セカンドオピニオンを聞きに行き、代替療法を調べ、いくつかを取り入れた。
そして、入院している母と、自宅療養している父をおいて、全員で川崎大師の護摩祈祷に来たのだった。
とても寒い日だった。
正座のせいか、寒いせいか、足の痺れもないぐらい感覚がなかった。それすらも自分に課しているようだった。寒いなんて言っていられなかった。家族の誰も、寒いとは言っていなかった。
あの時の空気の冷たさが、あの時の感覚が甦ってきた。
そして、見覚えのある空海の言葉。
「三密加持すれば即疾に顕る」
今、あらためて思う。
母を自宅で看取ることが出来たこと。
最期の一息まで、家族全員で見届けた意味を。
母がわたしたちに教えてくれたことを。
込み上げてくる想いとともに、大山門に立ち尽くしていたら、黒い猫が目の前を走り過ぎていった。
沙門空海さん、どうもありがとう。